はじめに
「AI を全面禁止」というルールは粗すぎます。私自身、knowledge-gardener / supernemawashi / taskdog / ttymap の開発で AI を全力で使っていながら「自分で考えていない感じ」は出ていない。一方、blog を「X について 1500 字書いて」と AI に投げると一発で「AI で書いた感じ」になる。
何が違うのか。整理すると、build と write では 奪われる層が違う ことに気づきます。
- build: AI 担当 = typing / boilerplate / lookup / 実装の細部。自分担当 = 何を作るか / どう設計するか / なぜ必要か → thinking layer は自分側
- write: AI 担当 = 角度 / 例 / 主張 / 結論 → これ全部 thinking layer
つまり「AI で書いた感じ」の core は thinking-ownership の喪失 であって、AI 使用そのものではない。本記事はその解像度を上げ、境界を prompt ではなく workflow に倒す話です。そして本記事自体が、後述するワークフローで書かれた検証材料の一つでもあります。
思考レイヤと表面レイヤを分ける
ルールを書き直すとこうなります。
- ❌ 思考レイヤを AI に任せる: 角度 / 主張 / 例 / 比較 / 結論 / 全体の流れ
- ✅ 表面レイヤを AI に任せる: typo / 文法 / 翻訳 / 論理 sanity check / 事実確認 / 整形 / 重複指摘 / 抜けの質問
これは「ルールの緩和」ではなく、ルールの解像度を上げて守りたいものを正確に守る 作業です。
ただし、これを prompt 単位で毎回引き直すと judgement cost が残る。書くたびに「いま AI に思考させていないか?」を判定し続けるのは疲れます。
順序を逆にする ─ prompt ではなく workflow で守る
[従来] [workflow に倒した割り切り]prompt 設計で境界を引く 思考は事前に vault に溜まっている→ 書く瞬間に AI を制御する → AI に渡す時点で思考は既に終わっている → AI は思考者ではなく要約者時系列のシフトで境界を守るのではなく、vault の provenance で守る。
| 層 | 中身 | workflow での扱い |
|---|---|---|
| 体感面 | 自分の指でタイプしたか | 捨てる(AI 要約で OK) |
| 構造面 | 思考が誰のものとして残っているか | vault commit log が provenance を担保 |
体感面を捨てて構造面に倒す。vault に思考の git history が残る限り、blog 段階で AI が文面を書いても「自分が考えた」という事実は変わりません。
blog 1 本書くときの workflow
[1] 通常の vault 運用で思考過程を蓄積(fleeting → permanent)[2] blog 化したいとき、自分で source note を選ぶ ← thinking layer[3] 自分で記事の outline を書く(角度・主張・順序) ← thinking layer[4] AI に「この outline + これらの note で N 字記事に圧縮」を依頼[5] AI 出力を自分が check(角度になっているか / claim が抜けていないか) ← thinking layer[6] 自分の指で書き直し(articulation 段階で介入) ← thinking layer[7] publish[1]-[3] と [5]-[6] が thinking layer。AI が触れるのは [4] と部分的な [6] の参考材料生成のみです。
副次効果として、自作 knowledge-gardener plugin の dogfood が走り、vault → AI 要約 → blog という workflow 自体が distribution material(このような記事)になります。
注意点・ハマりどころ
- vault に十分な思考蓄積がない記事を AI に書かせるべきでない。要約元が薄いと AI が thinking layer を補完してしまい、結局「AI で書いた感じ」が戻る
- つまり vault の 蓄積密度 が blog 化可能性の前提条件になる
- cadence 問題(私の場合 9 ヶ月 4 記事 = 0.44 本/月)は「AI を使うか」ではなく 「vault 蓄積が thin な領域で blog 化を試みている」 可能性が高い
- 「AI 全面禁止」を解除する前に、vault に書く習慣のほうを先に作る
結果
- prompt 単位で AI 境界を判定する judgement cost が消えた
- vault → blog の workflow に乗った記事は AI を使っても「自分のもの」と感じられる
- 「書けないから vault に書く」が成立し、書いた思考が後で記事化される自然な path ができた
- 結果として、本記事も上述の workflow で書かれた最初の検証材料の一つになっている
まとめ
- 「AI で書いた感じ」の core は thinking-ownership の喪失。AI 使用そのものではない
- ルールの解像度を上げる: thinking layer は自分、surface layer は AI
- それを prompt 単位ではなく workflow 単位で固定: vault → AI summary → blog
- 守られるのは vault provenance。git history が「誰が考えたか」を担保する
この draft の thinking layer(角度・主張・例・結論)は私の Obsidian vault の permanent note に由来します ── その vault の運用方法はこの記事に書きました。本記事は surface layer の体裁化のみ AI 介在 ── つまり、ここに示した workflow の最初の検証材料の一つです。