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パンの圧縮による正味カロリー低減の可能性


はじめに

本レポートは、「パンを物理的に圧縮することで正味カロリーが低減するのではないか」という仮説についての考察である。 きっかけは、お笑いコンビ・サンドイッチマン伊達みきお氏がテレビ番組で語っていた「カロリーゼロ理論」である。 その中で「麩菓子のようなふわふわした食品はほぼ空気だから0kcal」「パンもほぼ空気だから0kcal」「圧縮すればカロリーが空気中に拡散する」といった言説に触れた記憶がある(※番組名は思い出せず)。 当時の私はその理論を聞きながら、ふと「いや、圧縮が足りないのではないか?」と考えた。 もし家庭用レベルの圧縮では不十分なら、産業用プレス機で極限まで圧縮すれば、本当にパンのカロリーは消えるのではないか──そんな疑問が本研究の出発点である。

背景

食品のカロリーは食品中の炭水化物、脂質、タンパク質などの化学エネルギーによって決まる。 しかし実際に体内で吸収されるカロリー(正味カロリー)は、調理法や食物の物理的性質により変動し得る。 一例として、ナッツ類は粒のまま食べると吸収率が低く、表示カロリーより実際に吸収されるカロリーは少ないことが知られている。

議論のきっかけ

サンドイッチマン伊達氏の「カロリーゼロ理論」から派生した仮説として、「パンを極限まで圧縮すれば、消化不可能となり正味カロリーをゼロにできるのではないか」という考えが浮かんだ。この仮説を科学的視点から検証してみることにした。

科学的考察

カロリーの本質

食品のカロリーは化学エネルギーであり、圧縮しても消失しない。したがって、圧縮そのものがカロリーを「空気中に拡散」させることは物理的に不可能である。

圧縮の影響

圧縮により食品の密度が上がることで、酵素や胃液の浸透を阻害し、消化吸収率は低下する可能性がある。ただし、化学構造を変えない限り、完全に消化不能にすることは困難であり、正味カロリーをゼロにすることは不可能と考えられる。

極限の圧縮(原子レベル)

原子レベルでの超高密度化は理論上、人体で消化吸収不可能となり正味カロリーはゼロに近づくだろう。しかしこの段階ではもはや「パン」ではなく物理的に別物であり、実現には天文学的エネルギーが必要で非現実的である。

実現可能なアプローチ

圧縮のみによる方法

高圧による物理圧縮と乾燥を組み合わせることで密度を上げ、消化酵素の浸透を物理的に阻害する。さらに咀嚼困難な固形物を作成することで、理論的には正味カロリーを50〜70%程度低減することが可能と考えられる。この方法であればパンの見た目や成分は保つことができる。

コーティングや素材変更を加える方法

酵素耐性のコーティングや難消化性素材の使用により吸収率をさらに下げることも可能だが、パンの本質を変えるため本レポートの対象外とする。

実験的圧縮パンの設計案

実験的な圧縮パンを作成するには、200〜300MPaの油圧プレスを用いて圧縮を行う。水分量は乾燥により10%以下に抑え、噛み切れず飲み込みにくい3cm角程度の固形に成形する。これにより酵素浸透阻害、咀嚼阻害、消化率低下を狙う。

今後の課題と展望

実際に圧縮パンを作成し、消化吸収率を人体または消化酵素試験で評価することが必要である。また、食品としての安全性や食味の改善も検討課題となる。栄養学的・健康的な観点から、正味カロリー減少の効果と影響を総合的に評価する必要がある。

まとめ

「パンの圧縮によるカロリーゼロ理論」は物理的に成立しないが、圧縮によって消化吸収率を大幅に下げることは科学的に可能である。極限的な圧縮は実用的ではないが、高圧・乾燥を用いた「実験的圧縮パン」の作成で正味カロリー低減の検証は可能と考えられる。本テーマは食品工学と消化生理学の興味深い交差点であり、今後の研究の余地がある。 ※この記事はネタです。

参考